服装選びもデートのうち
そんな私に恋人らしき人ができたのは、高校を卒業して短大に入ったときでした。御承知の通り、短大には女子生徒がたくさんいるものですが、なぜかここでは彼女がつくれなかった。その年の夏のことです。
私はアルバイトから帰る途中に、中学時代の同級生の女の子に偶然出会ったんです。彼女の方から声をかけてきました。なんでも彼女はそのとき浪人中で、代々木にある有名な予備校に通っているということでした。ほんの少しだけ話をしてすぐに別れたんですが、それから頻繁に彼女から電話がかかってくるようになりました。
そして、夏の終わりに彼女から映画を観に行こうというお誘いがありまして、私は喜び勇んで承諾しました。誠に恥ずかしい話、実はこれが生まれて初めてのデートでして、嬉しい反面、ちょっぴり怖い気もしました。なぜ怖いのかと言いますと、正直、デートの方法が分からない。どこへ行けばいいのか、何を食べたらいいのか、またどんな話をしたらいいのか、さっぱりでした。とりあえず、デートに着ていく服を買いに行ったりもしましたが、これがまたどんな服を選んで良いのか分からない。
もう、分からない事だらけでしたね。それでも約束の日は近づいてくるものでして、こうなったらヤケクソだと、適当に着替えて家を出る。彼女と落ち合って新宿へ。そこで向こうの映画を観て、さてどうしましょう、という事になる。いつまでも私が黙っておりますと、「お好み焼きでいい?」と彼女。私はただ頷くだけでございました。そんなふうに私の初デートは終わったのです。なんか疲れた一日でございましたね。それからはあまり彼女と会えなくなったんです。ほら、なんせ彼女は浪人中でして、受験の日も近づいておりましたから、私の方も極力連絡を控えたのです。
春になりました。さすがにもう受験は終わっているだろうと思いましたが、私からはどうも連絡を取りにくかった。ひょっとして、彼女はもう私の事なんか忘れているのでは。そんな事も考えていました。そして、そのままジメジメした梅雨がやってきたのです。